「今の人たちは、ラベルでワインを飲んでるんです」
2日目の宿は、ブルゴーニュ・ワイン街道のまっただ中、ヴジョー村の小さなホテルだった。
この建物の、屋根裏の部屋。
部屋からは、葡萄畑が一望できる。
あまりに見事な風景だったので、朝食に下りていった際に、畑まで出てみた。遠くに、クロ・ヴジョー城が見える。
で、最後に訪れたのが、ここから15分ほど北上したマルサネ村にある、ブリュノ・クレールBruno Clairという造り手だった。Mさんに教えてもらうまで僕は全然知らなかったのだが、日本でもずいぶん人気があるみたい(こちら)。
Mさんも言うように、「ブルゴーニュの大御所」なのだけれど、これまでに会った二人同様、人懐こく、ワインについて語り出したら止まらない人々だった。(またまた、Mさんの報告をどうぞ)
左がカーヴの中を案内してくれた、フィリップ・ブランPhilippe Brunさん。そして右が当主の、ブリュノさん。フィリップさんが醸造一切を担当し、ブリュノさんは葡萄作りに専念と、完全に役割分担している。
なんでも70年代のお家騒動ですっかり規模が縮小し、存続の危機に陥った時、醸造学校時代の同級生だったフィリップさんに救いを求め、以来ずっと二人三脚でやって来ているということだ。
試飲が一通り終わった頃、ブリュノさんがふらっと現れた。「ぜひ、いっしょに」と勧めたら、照れくさそうに並んでくれた。二人のチームワークは、見るからに悪くない感じだ。
さて肝心の試飲の方だが、フィリップさんの説明を聞きつつ、ボンヌ・マール、シャンベルタン、あるいはジュヴレイ・シャンベルタンの1級畑、特級畑を次から次へと飲ませていただく。めくるめく体験とは、こういうことをいうのだろう。
柔和なフィリップさんは、時にけっこうキツイことを言う。たとえばシャンベルタンを樽から飲ませてもらってる時、「乳酸発酵の前、あるいは終わった直後、それをテイスティングして優劣を判断する自信は、私にはない」などと言う。これはもちろん、ワインジャーナリストたちに対する皮肉である。まだ全然完成されてない状態なのに、何がわかるんですか。その評価で、私たちのワインの優劣が決まってしまうんですよという、これに似た嘆きは、レジスおじさんも言ってたなあ。
それから、「今の人々は、ラベルを飲んでるんです」という言葉も、耳が痛かった。これまたレジスおじさんの、「うまけりゃ、いいんだ」という表現に通底するものがあるかも。ただしこの人たちはものすごい蓄積があって、その上でそう言っている。いわば、悟りの境地みたいなものだ。
秋の出番を待っている、巨大な開放樽。収穫された葡萄をここに入れて、棒でかき混ぜたり、人が裸で入って足で攪拌したりする。
今回訪れた3つの造り手はいずれも、造り手自身の個性を前面に押し出すというよりは、葡萄や土地の声に耳を傾けることを心がけている。「ブルゴーニュの特徴は、フィネスfinesse(繊細さ)にある。そのテロワールの特徴を伝えるのでなければ、ブルゴーニュで造る必要はないでしょう」というフィリップさんの言葉は、まさにその決意表明と受け止められた。
そんな素敵な旅に誘ってくれたMさんに深い感謝を表しつつ、さあ次はどこに連れてってくれるのかな・・。
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コメント
お家騒動は本当に大変だったみたいですね。ルイ・ジャドにも相当畑が売られてしまったようです。
ところで、次の旅は、”キンシャサ食い倒れツアー”というのはいかがでしょうか?
投稿: minmin | 2008年5月18日 (日) 00時44分
お互い、夜更かしですねえ・・。
次は間(あいだ)を取って、モロッコとか。でも当分は、ブルゴーニュに通いたい!
投稿: ムッシュ柴田 | 2008年5月18日 (日) 01時15分
ブルゴーニュが旅行するところというより、「通う」ところになると、ワイン馬鹿も本物ですよね。
投稿: minmin | 2008年5月18日 (日) 02時37分
今日、某ワイン雑誌の関係者と話してたら、来月ロマネ・コンティ特集で現地に行くと言ってました。う、うらやましい・・。
投稿: ムッシュ柴田 | 2008年5月19日 (月) 01時27分
うらやましいですねー。でも、DRCの何がすごくて何がすごくないかはポッといっただけではわからないと思います。結局ラベルで飲んでしまいます。造り手訪問を重ねていくことが一番だと思います。
投稿: minmin | 2008年5月19日 (月) 21時59分
なるほど、なるほど。そうなんでしょうね。さっきブログを更新して、レジスおじさんのヴォルネイの美味さに、あらためて思いを馳せたところです。
投稿: ムッシュ柴田 | 2008年5月19日 (月) 23時10分