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2008年3月16日 (日)

グッゲンハイムの秘かな愉しみ。

 グッゲンハイム美術館の2階にあるレストラン。手前はカフェテリアになっていて、その奥にひっそりとあるのでわかりにくい。僕たちもガイドブックで存在を知らなかったら、行っていなかったと思う。

 スペインへの出発前に、メールで予約を依頼する。しかし「その日は満席。カフェテリアで食事なさい」というつれない返事が返ってきた。それでもあきらめきれず、昼前に直接頼んだらあっさりOKが出た。店が開く1時半まで美術館横の公園で遊んでから、いざ入場。すでにカフェテリアはごった返しているが、奥はガラガラである。

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 内装はこんな感じの、ごく簡素なものだ(でもこの椅子もフランク・ゲーリーのデザインであると嫁が後から教えてくれたので、付け加えておきます)。

 スペイン・バスク料理の三つ星シェフ、マルチン・ベラサテギの開いた店だという。3年前にサンセバスチアンの店で食事をして、忘れられない思い出となった。今回は、その再現を期待したわけである。ただしこの店はベラサテギ自身ではなく、20代の若い弟子に任せたものという(名前がどうしても、思い出せない)。

 「センセーション」と名付けられたコースメニューを注文する。

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 まず出てきたつき出しは、パプリカソースの上にフレンチフライが2本だけ、ちょこんと載っているもの(よそのテーブルを見てたら、時々3本のってる幸運な客もいた)。シンプル過ぎないだろうか。でも、おいしい。

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 そして一皿目は、ほぼ生のジャガイモをサイの目に切ったものが運ばれ、そこへこれまた生の(!)グリーンピースソースがその場で注がれる。この日はその後の料理も、何度も何度も、「何かを注ぐ」という儀式が繰り返された。

 最近のフレンチは、ムースとかスフレとか、やたらと泡っぽいものを出す店がある。これを「泡系レストラン」とすれば、ここは「注ぎ系レストラン」と名付けることにしよう。

 豆の苦手な嫁は、この料理に目を白黒させていたが、ジャガイモのしゃきしゃき感と強烈な青臭さが、なぜか絶妙に調和する一品だった。この一皿目で、若きシェフのただ者でなさが、十分に実感できた。

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 二皿目も、もちろん「注ぎ」である。ドングリだけを食って育ったイベリコ豚の生ハムをローストした上に、カリフラワーのメレンゲが載っている。そしてそこに、シェリーっぽい風味のワインベースのソースが注がれる。

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 そして三皿目。見ただけでは、何だかよくわからない。ローストしたトマトでできた器の中に、フレッシュクリームで和えたちびイカが詰まっている。そして下には、イカ墨のリゾットが敷かれている。

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 開けてみると、こんな感じ。このお皿は、「注ぎ」はお休み。

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 四皿目は、子牛のコンフィ。ぱりぱりと香ばしく揚がった肉に、ニンニクとオニオンを効かせたソースが注がれる。ここまで豚、イカ、牛と続いても、少しも重くもたれない。

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 ワインはフルボトルは無理なので、500mlを注文。出してきてくれたのは、タンポポの花の描かれたRODAという2003年の赤ワインだった。一口含んで、その滑らかさ、エレガントな複雑さに驚かされた。リオハといえば、重厚が過ぎて、ちょっと野暮ったいという偏見があったが、これはまったく別次元のワインだった。

 ネットで調べてみると、すでに日本では知る人ぞ知るスペインワインらしい。ロトランさんとダウレラさんという夫婦の造り手で、二人の名前を取って、「ロダ」にしたという。

 タンポポをあしらっているのは、明らかに自然派ワインを標榜しているのだろう。本来は重厚なRODA1(ウノ)と、洗練されたRODA2(ドス)とに分かれてるらしい。飲んだのは、そのどちらの表示もなかった。ただ、ここのRESERVA(レゼルヴァ 1年以上樽熟成されたスペインワイン)は、100年以上の古木の葡萄から作られてるということなので、この複雑精妙さは、そこからも来ているのだろう。ぜひ欲しい、と思わせるスペインワインだった。

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 最後のデザートは、「ベークド・アップルのニョッキ(イタリア風団子)」とある。どんなものが出て来るのかと思ったら、これ。ニョッキというより、ゼリーのよう。真ん中は、シナモンアイスクリーム。そしてチェダーチーズのソース。これは、とろけました。争うように、完食。

 この若いシェフ(まだ名前が出てこない)は、のびのびと自分の独創性を追求し、しかもそれが独善に陥っていない。ロブションのような老成した手練れもいいけれど、驚きがない。こちらの期待を、超えることもない。料理はやっぱり、「え、これは何?」「次は、何が出て来る?」「う〜ん、おいしい」というワクワク感がないとね。

 美術館とレストラン。このふたつのためだけに、ビルバオを訪れる価値は十分にある。そう思いつつ、北スペインの旅を締めくくりました。

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コメント

うわっ、美術館内のレストランというだけで興味津々なのに、ナンですかこのレベルの高さは!テーブルの興奮状態がガンガン伝わってきました。ぜひぜひ行ってみたいです。

投稿: しろみ | 2008年3月17日 (月) 08時18分

フランスのフレンチとさらに違うところは、こっちの方が値段もはるかに良心的なことでした。ぜひぜひ、お試しあれ。(南半球より)

投稿: ムッシュ柴田 | 2008年3月17日 (月) 09時59分

ご無沙汰してます。南半球お疲れ様でした。なんだかえらいことになりましたね。
それにしても、グッケンハイムはすごいですねぇ。一度は見てみたいなぁ。

投稿: ワイン飲めない男 | 2008年3月17日 (月) 17時23分

今、赤道のちょっと上にいます。現地時間朝の6時。国際出稼ぎも、楽じゃないです。マッサージにでも、行ってくるか・・。

投稿: ムッシュ柴田 | 2008年3月17日 (月) 23時27分

素敵なレストランですね
楽しそうです、

注ぎのレストランですかそれにしてもおもしろいですね

投稿: ryuji_s1 | 2008年3月24日 (月) 03時24分

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