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2008年1月11日 (金)

前首相は、何を思う?

 今年も初出張は、ドイツ・ケルンへの1泊2日の短い旅だった。例年ならレンタカーで走って行くのだが、今年は初めて鉄道を選択してみる。フランス→ベルギー→ドイツと、3カ国を横切る行程だ。

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 ユーロスターの発着駅でもあるパリ北駅から出発する、タリスという国際列車に乗る。北駅といえば、逃亡中のジェイソン・ボーンが警官に見とがめられ、カーチェイスを繰り広げる発端になったのが、この駅前だった。(「ボーン・アイデンティティ」の主人公です)

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 ブリュッセル、リエージュを経由して、ケルンには3時間50分後に着く。ブリュッセルまではきわめて高速、順調なのに、それ以降は在来線の線路を使うので、スピードがガクンと落ちてしまう。日本の新幹線に比べると揺れがひどくて、読書やパソコンはちと目にツライ。ひとりで何もしないで約4時間の旅は、ちょっと退屈だった。

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翌朝、ホテルの部屋から望む、夜明けのケルン大聖堂。

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 一応、仕事もそれなりにこなし・・

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 帰りの列車では、ブリュッセルから見覚えのある人が、同じ車両に乗り込んできた。長身、痩躯。銀髪の後ろ姿を見ただけで、あれっと思い、改めて鋭い目つきの、バタ臭い写楽顔を見たらやっぱり。前首相のド・ヴィルパンだった。

 ほんの数カ月前までは、大統領候補とも言われていた人。でも在任中の失政が響き、さらにライバルだったサルコジを追い落とそうと、彼が贈収賄事件にかかわっているかのような証拠をでっち上げたとして(クリアストリーム疑惑)、事情聴取を受けている身である。

 もともとシラク前大統領の忠実な側近で、その意を酌んでがんばってしまったようだ。しかしおかげで失脚し、政治生命もほぼ終わったと思われている。今後、塀の中に入ってしまう恐れすらある。

 ブリュッセルから乗ってきたのは、EUの所用だったのか。SPと夫人がひっそりと付き添っていた。もしかしたら、ファーストレディになっていたかも知れないこの女性は、サルコジ前夫人と違って物静かで、車中でも夫の向かいに坐ってほとんど言葉を発しなかった。

 乗客たちは、もちろん彼の存在に気付いているはずだが、見て見ぬふりの大人の対応をしている。席から中腰でこっそりのぞいてるのは、僕ぐらい(もし嫁がいたら、並んで記念写真を撮って、サインをもらってたことだろう)。

 時々携帯が鳴って、前首相が答えていた。「いや、それはよくわかってる。しかし私も、毅然とした態度で対応するつもりだよ。それしかないじゃないか」。

 少し甲高いが、滑舌のいい声が車内に響き渡る。クリアストリーム関連?と思いたくなるような、緊迫した口調。そういう時だけは、知らん顔をしている他の客たちも、思い切り耳をダンボにするのであった。

 

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コメント

バタ臭い写楽顔って、フランス人なのに・・・言いえて妙。

投稿: しろみ | 2008年1月11日 (金) 18時02分

しろみさん、こんにちは。
本人にカメラを向けるわけにもいかず、残念ながら写真は掲載できない。それであんな表現になりました。でも役者絵顔というか、歌舞伎顔って、外人にけっこうありますよね(と、ここで具体例を3つぐらい挙げたいところだが、思いつかない)。

投稿: ムッシュ柴田 | 2008年1月12日 (土) 06時45分

役者顔のフランス人、前にパッシーマンダリンで隣のテーブルにいた、フランス2のアナウンサーの人、どうでしょう?彼の目なんか、かなり写楽の役者絵っぽいでしょ?
フランスのテレビ見てる人にしかわからないか・・・。
狛犬顔ならジョエル・ロビュッションに一票。

投稿: みらくるりん | 2008年1月13日 (日) 19時08分

ロブションはどちらかというと、フレンチブルドッグ顔かも・・。

投稿: ムッシュ柴田 | 2008年1月13日 (日) 23時44分

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