ピアノも乾く。
ウチの近所に、古い小さなピアノ工房がある。中では二人の女性がピアノに囲まれ、ワイヤを張り替え、寄せ木細工の表面の細かい修復に没頭している。地下への階段を下りて行くと、そこにはさらに足の踏み場もないほどのピアノが、ホコリを被っている。多くは、20世紀初頭に製造されたものだ。ほとんど使い物にならないこれらの古ピアノを、3ヶ月から半年の時間をかけて、できるだけオリジナルに近い状態に蘇らせる。それが彼女たちの仕事だ。
その一人が、日本人女性の岡安明子さん。調律師だった明子さんがパリに来て修復師になったいきさつは、ご本人のホームページを見ていただくとして。ウチもそのアトリエに何度も遊びに行って話を聴くうち、だんだん古いピアノの魅力に取りつかれてしまった。
地下の倉庫に眠っていた中から1台を選び、修復をお願いしたのが今年の初め。明子さんたちはがんばって予定より早く仕上げてくれ、ある初夏の朝、屈強な男二人が6階のわが家まで階段で運び上げた。
1925年に作られたこのピアノは、パリの老舗だったガヴォー社のもの。同社は戦後、日本のピアノメーカーに押され、姿を消してしまった。ちなみに製造年は、右側に貼ってある金属製プレートの数字を、ガヴォー社の記録と照合して判明した。
先日、2度目の調律に訪れた明子さんは、しばらく作業を続けてから、「ちょっと問題がありますね・・」と言う。部屋の中の乾燥がひどく、各鍵盤の木製のアクション部分が収縮してしまい、ガタガタになっているのだという。もしその上部にあるピアノ線を締めるピン(黒いのがたくさん並んでいるもの)まで緩んだら、調律不可能になってしまうらしい。
「どうしたら、いいんでしょう」
「加湿器を付けっぱなしにして、湿度を高くするしかないですね」
「今、何%ぐらいでしょうね」
「この感じだと、せいぜい30%でしょう」
ワインセラーの湿度計を持って来て計ったら、ピッタリ30%だった。おそるべし、ピアノ調律師の湿度体感センサー。われわれはすぐに電気屋へと、加湿器を買いに走ったのだった。
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コメント
ムッシュ家のサロンに鎮座まします、寄木の美しいお姫さま。(ご次女?)
修復前の倉庫での姿を知る一人としては、ここまで素晴らしくよみがえるとは想像できませんでした。明子さんとシルヴィーさん、二人の女性の手によって、再び息を吹
き返したすてきなピアノ、いっぱい歌わせてあげてくださいね。
私の実家のピアノは、こちらとは逆に除湿機フル回転です。ワインに負けず劣らず、手がかかりますね、、、
投稿: みらくるりん | 2007年12月25日 (火) 15時38分
みらくるりんさん、パリは寒い?
せっかく加湿器を付けたけど、そのままで日本に帰るわけにもいかず、1日で切ってしまいました。またバリバリに乾燥してるんだろうな・・。
投稿: ムッシュ柴田 | 2007年12月28日 (金) 01時56分
美しいピアノですね・・・
聴いてみたいですう・・・。
日本ではガヴォーのピアノ見た事ありません。
最近お気に入りのCDがガヴォーのものと判って、
とっても気になってます。
投稿: 12+8=20! | 2008年4月19日 (土) 14時58分
こんにちは。コメントありがとうございます。
こないだプレイエル社の、やはり20世紀初頭のピアノを聴いたんですが、同じフランス製でも音色が全然違いました。プレイエルは華やか、ガヴォーはしっとりした感じですね。
投稿: ムッシュ柴田 | 2008年4月19日 (土) 22時08分
いきなり挨拶もせずにお邪魔してしまって済みません。
あらためまして、おんしょんて。
ガヴォーのピアノを検索していてたどり着いたのですが、
改めて過去の記事を拝見させていただきました。
写真もお話もいいですねえ。
日本にお帰りになるかも、ということで始められたとのことですが、
ゆっくりなさっていただきたいところです。
パリに行きたくなってしまいました。(その他のところもいろいろ)
プレイエルとガヴォーの印象は私も同じです。
エスクワイアという(元はアメリカの雑誌だと思いますが)雑誌に
新旧プレイエル比較のCDがついていたことがあったのですが、
なかなか、華やかななかにも違いがあって面白かったです。
ところで私は焼津っ子でして、実家がかなりお近くてびっくりしました。
ではでは。
投稿: 12+8=20! | 2008年4月20日 (日) 10時27分
こちらこそ、改めまして、こんにちは。
今回みたいにネットの大海の中から、これまで接点のなかった方に偶然読んでもらって言葉を交わせるのも、ブログを始めてよかったなあと思うことですね。
もし機会があったら、島田の「蕎の字」、行ってみて下さい。僕も夏に帰ったら、ぜひまた行こうと思ってます。
投稿: ムッシュ柴田 | 2008年4月20日 (日) 16時32分