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2007年12月 8日 (土)

パリのビストロ、侮りがたし・・。

 近所のO夫妻、アフリカから一時帰仏中のMさん、うち夫婦の5人で、17区のビストロへ出かける。「アントレ・ドゥ・ジュ」Entredgeuという不思議なスペルの名前を持つ店だ。これまたご近所のAミンの「すごく美味しいから」という熱烈推薦を受けて、冷たい雨の中を地下鉄を乗り継いでやって来たのだった。

 Mさんは僕のワインの先生であり、人生の折り返し点を過ぎてからできた貴重な友人でもある。そしてO夫妻のご主人が、Mさんと同期という関係。夫妻と食卓を囲むのはこれが初めてだったけれど、飾らない人柄ですぐに打ち解け、大いに盛り上がった。

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 このビストロでは、黒板にチョーク書きの今日のメニューが何枚も用意されてて、各テーブルでじっくり見るようになっている。普通はギャルソンがささげ持って説明したりするものだが、ここでは客が支える。後ろのテーブルでも、同じようにやってるのが可笑しい。

 発泡性のロゼやヴァン・キュイ(vin cuit甘口の加熱処理したワイン)などのアペリチフを口にしながら、料理とワインをじっくり選ぶ。たいていの場合、じっくり選ぼうという気にさせる店は、すでにほぼ当たりと思ってよさそうだ。この晩も腹の虫を抑えつつ、あーでもないこーでもないと楽しい時間が過ぎた。

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 前菜で一番感心したのは、この「豚足のクロケット」。このcroquetteがはるばる日本まで旅をして、コロッケに変身するわけだ。コトレットcoteletteがカツレツになったように。見た目は素っ気ないが、衣の香ばしさと豚足のぬるっとした食感が、いいバランスを保っている。

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 メインは豚のばら肉を焼いた一品を注文した。ほのかにショウガの香るソースと、脂身の柔らかさが秀逸で、「今夜はダイエットは忘れる」という声とともに隣からフォークが伸びてきた。

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 さらにダイエットと決定的にサヨナラするきっかけになりそうだったのが、このデザート。どうってことない栗のムースなのだが、控えめな甘さが栗の風味を十二分に活かしている。瞬く間に完食。どの料理も決してもたれるような重さがなく、すんなりお腹に収まってしまうのが恐い。

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 今宵Mさんは、この2本を選んでくれた。白はアルボワ・ピュピランというフランス東南部ジュラ地方の2004年。僕には初耳のワインだった。香りが独特で、サヴォワ地方のトムのようなチーズ臭がする。さぞチーズにも合っただろう。僕が前菜で頼んだ鱈のピュレとも、まったく問題なかった。強烈な個性の白である。

 赤はリストにあったヴォーヌ・ロマネが品切れになっていて、ローヌ地方のコート・ロチの2004年を注文する。決してでしゃばらずに、豚やら鴨やらいろんなメインに控えめに寄り添うワインだった。

 M師匠でさえ「知らない造り手がたくさんある」と言っていたほど、個性的なワインリストで、「おそらくビオがメインなんでしょう」とのことだった。有機農法でブドウを育て、醸造も添加物をできるだけ避け、天然酵母を使うワインが、近年は盛んに作られている。

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 アフリカの最新情勢から子育てまで話は尽きず、気がついたら10時半を回っていた。カフェを飲み終わっても喋り続けていたら、ギャルソンが申し訳なさそうに「次の人が待ってますんで・・」と言いに来た。フランスの食べ物屋でそんなふうに言われるのは、ずいぶん珍しい。店の入り口付近を見ると、まだテーブルの空くのを待っている人たちがあふれていた。急いで席を立ち、彼らをかき分けながら出口へ。いや、堪能しました。 

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